第466話・やさしくなりたい(3)
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――翌日、C大付属病院。
「ハアアァァァァ~~~~ッ!」
ドサッ!
長い長い怒涛の一夜がやっと過ぎ去り、
大人しくなった千尋の手を引き引き、
ヨロヨロと精神科棟の待合所を蛇行する俺。
帰宅前にひとときの休息を得るべく、
近場の椅子へ倒れ込むように腰を下ろし、
ガックリ首を傾けて、深く沈痛なため息をつき……
「………………」
そばへ座らされて静かに待機している幼児は、今や、
昨晩の喧騒など”どこ吹く風”といった様相で、
ケロッと宙を見つめ続けている。
あれだけ、周囲を巻き込む災禍を招いておきながら、
自分の気が晴れたら”それでおしまい”という、
自由奔放過ぎる『天然手の平返し』っぷりに、
ただただ、呆れを通り越してめまいを感じつつ俺は、
「……何なんだよ……お前って奴はよぉ……??
どーして、こんなに両極端で、人へ厄介をかける方向にだけ、
昼と夜が、キレーーに逆転しちまってるんだよおぉ~~!?」
横からツッコんでも、なじっても、
知らん振りで、返事すら無い。
ここに至るまでの、俺の苦労……
就寝中の継父を叩き起こして呼び寄せ、頭の固い警官どもに、
『千尋の夜泣きは精神疾患由来の夜驚症のため逮捕に該当しない』と、
一晩がかりで説き伏せて貰ったお陰で、ギリギリ、
留置所へぶち込まれるのを、回避できたというのに、
「それだけじゃねぇ……
アイツら、事情を把握しただけじゃ満足しねくて、
結局、ロブが近所を一軒一軒訪問して、謝罪と説明に回るっていう、
約束までさせられたんだぞ!?俺達みてーな未成年者が、
近隣へはなはだしい迷惑行為を拡散させるのを、
みすみす放任しておくとは何事かって、彼までお灸を据えられて……!
もぉロブには、申し訳なさすぎて、頭が上がらねぇよ!!」
住民達には何の情報も与えず、異音だけを垂れ流して、
あれこれ疑心暗鬼にさせてしまったのは、悪かったと思う。
しかし、それならそれで、
ひとこと言ってくれれば良かっただけの話……
普通に暮らしていて、なぜいきなり、
逮捕沙汰などという不運に見舞われなければならないのかと、
納得できない憤りを、ギリギリ噛み締めながら、
(畜生!!警察に告げ口したのは、どこのどいつだ!?
隣部屋のアイツか?それとも、真下に住むあの野郎か……??
連中だって、パーティー開いちゃ、ドンチャン騒ぎしてる夜が、
あるってのに……!……何で、ウチだけ……!!)
ある種『お互い様』な、暗黙の助け合いルールが、
卑怯なやり口で、一方的に破棄されたみたいに感じられて、
差別されているとしか思えなくて……
コントロールできない怨念をグルグル宿しつつ、床を睨み……
――arrrrgggghhhh!!(ギャアアァァァーーーーーッ!!)
「……ッア?!」
人間不信に陥りそうになっていたネガティブ思考を、
一発で吹き飛ばす絶叫サウンドが、痛烈に耳朶をつんざいてきて、
”ビクッ”とすくみあがる!
(何だ何だ!?すっげービックリしたぞ!!)
非常ベルを彷彿とさせるけたたましさに、
フロア全体が凍りつき……反射的に俺も、
声の主を視認しようと目線を動かし、
――Nope, nope, nope!! Nope, nope, nope!!
No way'n go awaaaa----yyy!!
(イ・ヤ・ダ!!イ・ヤ・ダ!!
イヤだったらイヤだぁぁぁぁ~~~~っっっ!!)
「……!!」
そこには、男性看護師二人に羽交い絞めにされてもがく、
5歳くらいのワンパク小僧……
訓練だか検査だかを受けるのを嫌がって、
あらん限りの抵抗をしては、脱走を試みている様が、
ガッツリかぶりつきのアリーナ席で、ライブ中継されていて、
――Shit!! Scum!! You dumbass!!
Fuuuck oooo----ffff!!
(ふざけんな!!クズ!!死ね!!
離せっつってんだろぉぉぉーーーーっ!!)
(おぉ~っ、やってるやってる!)
眼前を通過していく、組んず解(ほぐ)れつのデス・パレード……
大人二人を相手取った、圧倒的不利な状況すら、
ものともしない男児は、勇猛果敢に敵をけなしつけるわ、
噛み付くわ、のけ反るわ……しまいには、
持っていたオモチャを凶器として殴りつけながら、
這う這うの体で、ズルズル連行されていってしまい、
「……!!……す、スゲー……!!」
一部始終を目撃して、喫驚の吐息しか漏らせずにいる俺。
千尋が倒れてから、ここ児童外来へは、
何かと足を運ぶことが多くなり、
俺も毎回、種々様々な発達障害を抱えた幼児に出くわしてきた。
(『止まったら死ぬのか?』ってツッコミたくなる程、
猛スピードで徘徊しまくってる子や、
同じ場所で延々飛び跳ね続けてるガキんちょ……
どの子もそれなりに重症だから、
ついてる親達は皆大変そうで、気の毒に思ってたけど……
中でもアイツは、別格の荒くれ者だぜ!!)
小さな子供でも、凶暴なまま成長してしまったら、
半端なく手に負えなくなる事例を、目の当たりにしてしまい……
もしも千尋が、あの男児みたいな闘争本能を有していたら、
今頃俺の手足は、『まともに繋がった状態でいられたのだろうか?』と、
想像するだけで、背筋が凍りつき、
ヨロヨロヨロ~~ドサッ!!
「ハアアァァァァ~~~~ッ!!」
他人事ながら、男児の行く末を憂いていた所へ、
その母親らしき女性が、こちらへフラフラと歩み寄って来て、
疲労困憊し切った素振りで、俺の隣へ着席する。
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――翌日、C大付属病院。
「ハアアァァァァ~~~~ッ!」
ドサッ!
長い長い怒涛の一夜がやっと過ぎ去り、
大人しくなった千尋の手を引き引き、
ヨロヨロと精神科棟の待合所を蛇行する俺。
帰宅前にひとときの休息を得るべく、
近場の椅子へ倒れ込むように腰を下ろし、
ガックリ首を傾けて、深く沈痛なため息をつき……
「………………」
そばへ座らされて静かに待機している幼児は、今や、
昨晩の喧騒など”どこ吹く風”といった様相で、
ケロッと宙を見つめ続けている。
あれだけ、周囲を巻き込む災禍を招いておきながら、
自分の気が晴れたら”それでおしまい”という、
自由奔放過ぎる『天然手の平返し』っぷりに、
ただただ、呆れを通り越してめまいを感じつつ俺は、
「……何なんだよ……お前って奴はよぉ……??
どーして、こんなに両極端で、人へ厄介をかける方向にだけ、
昼と夜が、キレーーに逆転しちまってるんだよおぉ~~!?」
横からツッコんでも、なじっても、
知らん振りで、返事すら無い。
ここに至るまでの、俺の苦労……
就寝中の継父を叩き起こして呼び寄せ、頭の固い警官どもに、
『千尋の夜泣きは精神疾患由来の夜驚症のため逮捕に該当しない』と、
一晩がかりで説き伏せて貰ったお陰で、ギリギリ、
留置所へぶち込まれるのを、回避できたというのに、
「それだけじゃねぇ……
アイツら、事情を把握しただけじゃ満足しねくて、
結局、ロブが近所を一軒一軒訪問して、謝罪と説明に回るっていう、
約束までさせられたんだぞ!?俺達みてーな未成年者が、
近隣へはなはだしい迷惑行為を拡散させるのを、
みすみす放任しておくとは何事かって、彼までお灸を据えられて……!
もぉロブには、申し訳なさすぎて、頭が上がらねぇよ!!」
住民達には何の情報も与えず、異音だけを垂れ流して、
あれこれ疑心暗鬼にさせてしまったのは、悪かったと思う。
しかし、それならそれで、
ひとこと言ってくれれば良かっただけの話……
普通に暮らしていて、なぜいきなり、
逮捕沙汰などという不運に見舞われなければならないのかと、
納得できない憤りを、ギリギリ噛み締めながら、
(畜生!!警察に告げ口したのは、どこのどいつだ!?
隣部屋のアイツか?それとも、真下に住むあの野郎か……??
連中だって、パーティー開いちゃ、ドンチャン騒ぎしてる夜が、
あるってのに……!……何で、ウチだけ……!!)
ある種『お互い様』な、暗黙の助け合いルールが、
卑怯なやり口で、一方的に破棄されたみたいに感じられて、
差別されているとしか思えなくて……
コントロールできない怨念をグルグル宿しつつ、床を睨み……
――arrrrgggghhhh!!(ギャアアァァァーーーーーッ!!)
「……ッア?!」
人間不信に陥りそうになっていたネガティブ思考を、
一発で吹き飛ばす絶叫サウンドが、痛烈に耳朶をつんざいてきて、
”ビクッ”とすくみあがる!
(何だ何だ!?すっげービックリしたぞ!!)
非常ベルを彷彿とさせるけたたましさに、
フロア全体が凍りつき……反射的に俺も、
声の主を視認しようと目線を動かし、
――Nope, nope, nope!! Nope, nope, nope!!
No way'n go awaaaa----yyy!!
(イ・ヤ・ダ!!イ・ヤ・ダ!!
イヤだったらイヤだぁぁぁぁ~~~~っっっ!!)
「……!!」
そこには、男性看護師二人に羽交い絞めにされてもがく、
5歳くらいのワンパク小僧……
訓練だか検査だかを受けるのを嫌がって、
あらん限りの抵抗をしては、脱走を試みている様が、
ガッツリかぶりつきのアリーナ席で、ライブ中継されていて、
――Shit!! Scum!! You dumbass!!
Fuuuck oooo----ffff!!
(ふざけんな!!クズ!!死ね!!
離せっつってんだろぉぉぉーーーーっ!!)
(おぉ~っ、やってるやってる!)
眼前を通過していく、組んず解(ほぐ)れつのデス・パレード……
大人二人を相手取った、圧倒的不利な状況すら、
ものともしない男児は、勇猛果敢に敵をけなしつけるわ、
噛み付くわ、のけ反るわ……しまいには、
持っていたオモチャを凶器として殴りつけながら、
這う這うの体で、ズルズル連行されていってしまい、
「……!!……す、スゲー……!!」
一部始終を目撃して、喫驚の吐息しか漏らせずにいる俺。
千尋が倒れてから、ここ児童外来へは、
何かと足を運ぶことが多くなり、
俺も毎回、種々様々な発達障害を抱えた幼児に出くわしてきた。
(『止まったら死ぬのか?』ってツッコミたくなる程、
猛スピードで徘徊しまくってる子や、
同じ場所で延々飛び跳ね続けてるガキんちょ……
どの子もそれなりに重症だから、
ついてる親達は皆大変そうで、気の毒に思ってたけど……
中でもアイツは、別格の荒くれ者だぜ!!)
小さな子供でも、凶暴なまま成長してしまったら、
半端なく手に負えなくなる事例を、目の当たりにしてしまい……
もしも千尋が、あの男児みたいな闘争本能を有していたら、
今頃俺の手足は、『まともに繋がった状態でいられたのだろうか?』と、
想像するだけで、背筋が凍りつき、
ヨロヨロヨロ~~ドサッ!!
「ハアアァァァァ~~~~ッ!!」
他人事ながら、男児の行く末を憂いていた所へ、
その母親らしき女性が、こちらへフラフラと歩み寄って来て、
疲労困憊し切った素振りで、俺の隣へ着席する。
次回の更新日時は、
未定(一週間以上空くかも)です。
サイドバーの【ツイッター】も、毎日つぶやくのはムリかと…。
ごめんなさい!(/o<;;)
これに懲りず、またチョコチョコ覗いてやって下さいませ~。m(_ _)m
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